夏につきもの?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


今年の夏は昨年にも増しての猛暑っぷりで、
明日の予想最高気温の段階で、
猛暑日認定の数値がけろりと叩き出されたくらい。
昼前には既にもう、
外気は密度を増しての質量を帯び、
あっさりとセミを圧倒してしまうほどの威力だし。

 「そうなんですよね、
  外に出た途端、ばふって
  何かが顔とか二の腕とかに当たったような気がする、
  そんな暑さですものね。」

つばの広い麦ワラ帽子を脱ぎながら、
ちょっぴりつぶれた髪を さわさわっと、
指を立てた手で掻き回す所作も軽快に。
うんざりだという内容ながらも、
口調はなかなかに軽快なままで平八が告げれば、

 「そうそう。ウチは年嵩のお客様が多いんで、
  玄関前は冷房が届かないようにして、温度差を緩めないと。」

ほら、宇宙船とかの、気圧室?
エアルームっていうんでしたっけねと、
自分チにそんな配慮が要るようになろうとはと、
苦笑交じりに言ったのが。
この時期には外出の必需品、
こちらは小じゃれたカンカン帽を脱ぎながら、
金の髪を編み込みにしたすっきりした頭の、
されど生え際に浮いた汗を、
ハンカチで品よく押さえたのが七郎次。
そんな猛暑の中をわざわざやって来てくれたお友達二人を、
飼っているのはネコちゃんだが、ご本人はわんこ属性か、
お尻尾があったなら
クロップドパンツのお尻の辺りではたはた振ってるだろう、
チョーご機嫌さんで出迎えたのが、
こちら三木さんチの久蔵お嬢様であったりし。
先日、熱中症もどきで倒れてしまったあと、
プールサイドでそんなだったのだ、
日を追うごとに最高気温も上がりまくりという現状下なので、
もうちょっと用心した方がよろしかろうと、
他でもない、榊せんせえから言われてしまったがため。
数日ほどとはいえ、様子見の日々が続いており。

 「だってのに…。」
 「ヒョーゴせんせが来るでなし?」
 「〜〜〜。/////////」
 「おおお、期待してましたね?」
 「〜〜〜〜〜〜。/////////」
 「久蔵殿、判りやすすぎ。」

クールで鉄面皮だったあなたは何処へと、
かーわいいvvと抱きしめてしまった白百合さんだったものの。
判りやすいと思ったのは、
ここに居合わせた三華様同士の間でだけの話…ということ、
それこそ気づいてない、あとの二人なのだけれども。(苦笑)
長い毛並みが暑さには向いてないか、
こちらのアイドル、ややぽっちゃり系メインクーンのくうちゃんが。
それでも大好きなご主人様の視野の中にいたいのか、
同じお部屋のフローリングの床で寝そべっているのを見やりつつ、

 「で? この戒厳令はいつまでなんですか?」
 「? ああ。」

ひなげしさんから とんでもない例えにされて、
はい?と目が点になりかかった紅ばらさんだったけれど。
自分への外出禁止のことだと悟ると、
あらまあ そんな大仰なと、緋色の口許をうにむにとたわませる。
そうして、

 「週明けにも。」

そうそう大事を取るほどでもあるまいと、
それこそ、榊せんせえからの通達があったようで。
クラッシュアイスにミントを飾ったハーブティーへ、
シロップを加えてストローでくるりと掻き回すお嬢様、
少々つまらなさそうなお顔なのは、
その連絡が単なるメールで、しかも母上へと届いた代物だったから。

 “結構 気が利きませんよね、ヒョーゴさんも。”
 “うんうん。勘兵衛様をこき下ろす資格なし。”

どういう喩えを出しますかと、
こそこそとした意見交換の中、ひなげしさんがコケかかったほどに。
早くも脱線しかかったところはご愛嬌。

 「だったら、海水浴には出掛けられますねvv」
 「………vv(頷)」

そんなに遠出をするでなし、
しかも、本当は彼女らだけ、電車でGOしたかったところなれど、
近年のお転婆ぶりがとうとう家人の耳へも入ったか、
車を仕立ててお家から出掛けなさいとの、
さりげないクギを刺されてしまっておいでの彼女らで。

 『別に行き来の道中でまで騒ぎを起こしちゃいないのにねぇ。』
 『本当ですよね。』
 『……。(頷、頷)』

いやいや、
そういうことへの杞憂を抱えた皆さんじゃないと思われますが。(う〜んう〜ん)

 「お盆の集いの方へはどうですか?」

そうと付け足したのがひなげしさんで。
それへは、久蔵殿もそりゃあ判りやすく口許をほころばせてしまわれて、

 「大丈夫ですか?」
 「……vv(頷)」
 「それはよかった♪」

昨年はあちこちで自粛のムードも強かった、
夏休みやお盆の、お祭り系行事のあれやこれや。
でもでも今年はさすがにどちら様も落ち着かれただろうし、
あと、イベントを開けばそこで義援金への募金を募ることも出来るから。
女学園のある地域の町内会でも、
夜店を出してのお祭りを企画なさっておいで。
もともと、すぐご近所の川畔で催される花火大会があって。
それを見物する人たちが、
丘の上の見晴らしのいい公園に出て来るのを見越した、
ちょっとした縁日があったのだけれど、

 「え? 何ですて?
  知り合いからタコ焼きの妙技も教わった?」
 「やりますね。
  ゴロさんのアシスタントをわたしと競いますか?」
 「え? ヘイさんもお店側に立つんですか?」

今年の夜店の屋台へと、
五郎兵衛さんが“八百萬屋”出張店として参加するらしいので。
お店の方はバイトさんたちで回すとして、
じゃあこちらは、
浴衣姿で屋台へのお手伝いをという相談を詰めていた彼女らで。

 「だって夜店の屋台ですもの。
  イートインを作る訳じゃなし、お運びさんは要らないそうで。」
 「それは判りますけれど。」

呼び込みというか、お勘定とか受け渡しとか、
そういう“お愛想”でお手伝いをと構えていた七郎次が、
久蔵殿も平八までも、調理で参加ですかと
ちょっぴり意外そうに鼻白んでおいでで。

 「武道部の文化祭での青空カフェへの、
  予行演習だとすりゃあいいでしょに。」

 「……♪(頷)」

道着姿でお運びさんをしもするのでしょう?
ええまあ、調理は得意な方がおいでですからと。
合宿などでそういう特性も明らかになるもの、
そこから何とはなく文化祭での分担も決まって来る…という話を
いつぞや持ち出した白百合さんだったため。
だったら、綺麗どころならではのお役目の練習にせよという点で、
ひなげしさんも紅ばらさんも同意見らしくって。

 “でもなぁ……。”

勿論のこと管轄じゃあないけれど、それでもあのね?
勘兵衛様や征樹様にも話は振ってあるから、
時間が空けば、もしかしたらお運びくださるかもしれない。
だのに、

 “アタシだけ お愛想担当ってのは、
  ちょっとねぇ…。//////”

お料理がまだまだ初心者なのは、
あの二人にも知られちゃいるけど、それでもね。
こちらの二人が忙しい中、お愛想だけ担当というのも…と。
ややもするとうつむきかかった白百合さんへ、

 「………シチ。」
 「何なら当日までに特訓しましょうか?」

屋台仕事を甘く見ちゃあいけませんが、
でもでも、シチさんほどに器用なら、
焼きそばの方はお任せ出来るかも…と。
大好きなお友達の項垂れる姿なんて見たくはないと、
紅ばらさんとひなげしさん、
目ざとく気づいての気を回しかかったものの、

 「あ・でも、勘兵衛さんは
  シチさんの浴衣姿がご所望かも知れませんのに?」
 「や…何 言い出しますか、ヘイさんたらっ。///////」
 「島田なら…。(ありだな)」
 「でしょでしょ?」
 「久蔵殿までっ。//////」

んもうっと可愛らしいこぶしを振り上げた七郎次ではあったが、
お顔が真っ赤では迫力にも欠ける。
どっちに落ち着くかは当日までのお楽しみだとして、
それより何より、勘兵衛様当人がちゃんと来てくれたらいいですね。
夏の宵のドキドキを、
今からもう堪能していたお嬢さんたちだったようでございます。





      〜Fine〜  2012.08.03.


  *屋台というと、といいますか、
   関西人はタコ焼きですよ、やっぱりvv
   家庭向けお好み焼きの素もありますが、タコ焼きの素も売ってますしネ。
   実は昨日、ウチでも“タコ焼きパーティー”しましたしvv
   久蔵さんへレクチャーしたお友達は、弓野くんでしょうかね。
   大穴で、結婚屋こと良親様だったら笑えるvv

ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

メルフォへのレスもこちらにvv


戻る